日本生涯教育学会生涯学習実践研究所の設立について
このたび、われわれは日本生涯教育学会生涯学習実践研究所を設立することにいたしました。急速に高齢化が進む中で、我が国は人類未踏の超高齢時代に突入しようとしており、新たな社会を建設していかなければなりません。そのような社会建設には、人知を結集する必要があります。
長年にわたり日本生涯教育学会にあって生涯学習推進・支援の実践や研究に携わってきた研究者、行政関係者、生涯学習支援実践者は、超高齢時代の新たな社会建設に役立つ貴重な知見・知識・技術を数多く持っています。しかし、情報化の進展に伴う情報流通量の飛躍的な増加と流通の加速化によって、それらは膨大な情報の中に埋没してしまったり、見えにくくなったりしてきています。
本研究所は、そのような経験的知見・知識・技術を蓄積し、広く社会で活用できるようにするとともに、さらに新たな知識・技術を生み出すべく、創設されるものです。
本研究所の目的は
① 研究者や行政関係者、生涯学習支援実践者の長年にわたる軌跡の中から、今後、活用すべき経験的知見・知識・実践成果を再発見し、蓄積していくこと
② そのような経験的知見・知識・実践成果を生かして、行政・実践の問題を解決するためのさまざまな技法を開発すること
③ コミュニティ活動に関連した事業等を通して社会貢献を行い、地域を活性化していくこと
です。
われわれはこれらの目的を実現すべく、全国にセンターを設け、新たな実践研究を展開する予定です。
平成26(2014)年11月23日
設立賛同者(五十音順)
青山鉄兵 浅井経子 阿部耕也 井出 久 伊藤康志
井上昌幸 今西幸蔵 大島まな 小川誠子 神部純一
菊川律子 菊池龍三郎 清國祐二 熊谷慎之輔 小池茂子
小山忠弘 坂井知志 佐久間章 澤野由紀子 渋谷英章
清水英男 角替弘志 仲野 寛 波塚章生 新田憲章
原 義彦 船木茂人 古市勝也 真柄正幸 松永由弥子
松橋義樹 薬袋秀樹 矢端義直 柳田雅明 山川肖美
山本和人 山本恒夫 山本裕一 吉田広毅 渡部 徹
基本的方向
平成26年11月23日
生涯学習実践研究所の目指す基本的方向は、継承と創造である。
理由
これからの超高齢時代の社会では、継承と創造が大きな課題になると考えられるからである。
中央教育審議会生涯学習分科会「今後の生涯学習の振興方策について(審議経過の報告)」(平成16年3月)では、今後の生涯学習振興方策の基本的方向として、「個人の需要と社会の要請のバランス」「人間的価値と経済的価値の調和(経済的価値→審議経過の報告では「職業的知識・技術」)」「継承と創造」があげられている。
「個人の需要と社会の要請」は教育基本法に入っており、第12条(社会教育)は「個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。」となっている。また、「人間的価値と経済的価値」に関しては、我が国の場合、経済と道徳の調和がつねに問われてきており、最近は、アメリカや中国でもそれが大きな課題となっている。
ところが、「継承と創造」については、まだ大きな取り組みがなされていない。しかし、継承と創造は、今後の超高齢時代の社会で、我が国を根幹から揺るがすと予想される社会の劣化に対抗する社会的回復力(ソーシャル・レジリエンス、social resilience)を生み出す源泉の一つになるものと期待される。
超高齢時代の社会での「継承と創造」では、高齢者の知識・技術の蓄積をうまく活用しなければならないが、さいわい、本研究所は、みずからも高年期に入っている研究員の長年の実践研究を活用することができる。その利点を生かし、本研究所は、超高齢時代の社会の生涯学習支援に貢献すべく、実践研究における継承と創造を目指すことにしたのである。そのため、事務局には継承ユニットと創造ユニットを置くこととした。
注
なお、各ユニットは事務局の研究所員と研究員で構成する。